1.敷き布団のサイズ、JISと業界ではサイズ感が違う?
JIS規格で定められている敷き布団のサイズは、現在、暗黙の了解で業界が使用しているサイズとは少しズレています。(単位はcm)
【敷き布団のサイズとカバーサイズ表】
JIS規格 | 布団業界のサイズ | |||
---|---|---|---|---|
サイズ | 寸法 | サイズ名 | 寸法 | カバー寸法 |
S | 90cm×195cm | SL(シングルロング) | 100cm×210cm | 105cm×215cm |
M | 100cm×195cm | SDL(セミダブルロング) | 120cm×210cm | 125cm×215cm |
L | 100cm×210cm | DL(ダブルロング) | 140cm×210cm | 145cm×215cm |
SW | 125cm×210cm | WDL(ワイドダブルロング) | 150cm×210cm | 155cm×215cm |
W | 135cm×210cm | QL(クイーンロング) | 160cm×210cm | 165cm×215cm |
※既製品の掛布団は、長さ210cmが多いので、210cmを掲載しています。
【掛布団のサイズとカバーサイズ表】
JIS規格 | 布団業界のサイズ | |||
---|---|---|---|---|
サイズ | 寸法 | サイズ名 | 寸法 | カバー寸法 |
M1 | 150cm×195cm | SL(シングルロング) | 150cm×210cm | 150cm×215cm |
M2 | 160cm×195cm | SDL(セミダブルロング) | 170cm×210cm | 170cm×215cm |
L1 | 150cm×210cm | DL(ダブルロング) | 190cm×210cm | 190cm×215cm |
L2 | 160cm×210cm | WDL(ワイドダブルロング) | 210cm×210cm | 210cm×215cm |
SW | 170cm×210cm | QL(クイーンロング) | 230cm×210cm | 230cm×215cm |
※既製品の掛布団は、長さ210cmが多いので、210cmを掲載しています。
2.マットレスと敷き布団のサイズはそもそも違う
私たち布団職人は、昔からの敷き布団をつくる検定試験を受けます。
けれどマットレスは試験ではつくらず、ほとんどが工業製品です。
マットレスが西洋から来たもので、日本古来のものは敷き布団だからです。
敷き布団の歴史は、平安の頃からで、木綿わた敷き布団を使うようになったのは江戸時代からのようです。
木綿の前はワラが一般的で、これをきれいに仕上げたのが畳。
高貴な方は畳の上で生活できたのです。
マットレスの歴史は古く、その起源は、エジプトよりも前とされています。
私は、信州大学繊維学部で感性工学を研究しておられる吉田先生に
「エジプトのベッドの復元をするために、ベッドの張り感を見てほしい」
というリクエストをいただき、大学まで出かけたことがあります。
その時に、早稲田大学のエジプトピラミッド研究で有名な吉村博士および建築の分野で研究している先生とお会いし、エジプトの王様が使っていたベッド(大英博物館に保管)と同じベッドを復元したものを拝見し、文献を読ませていただきました。
どうやら、ヤシの木を原料にして糸をつくり、木の張力と、ベッドに編み状に張りめぐらせた糸の張力でスプリング感を出していたようです。
その糸のハリの強さを見てくれないか?とのお話だったのですが、エジプト人の身長、体重、筋肉の量などが分からないと見当がつかないという私の意見に、「まったくだ」となって、中断したのを覚えています。
その後、このベッドの上に、ヤシの繊維を固めたもの(現在のマットレスの原型)が上にのっていたらしいという話になって終了しました。
西洋では、鉄製のスプリングを生地で被った現在のベッドスプリングが開発され、主流となりました。
しかし現在は脱スプリングマット、硬質マットレスにするため、ベニヤ板に薄くウールや綿状のキルトを張り、裏側をホチキスで止めるようなお手製の硬めのマットレスが一部で流行しているようです。
また、ウレタンマットレスも「マニフレックス」のような硬質ウレタンがスプリングに代わって登場しています。
日本では、寝室という概念が一般家庭に進出してきた歴史はとても浅く、現在も部屋の中へ靴を履いて入る家は皆無です。
そういった家の環境で、フローリングに直にマットレスを敷く、日本独自のスタイルが生まれたのです。
(靴の文化ではないので、ベッドのフレームがなくても、泥やほホコリが寝具についてしまう心配がないのが理由です。)
マットレスの原型は西洋のため、サイズは、縦、横、厚みと3次元ですが、日本スタイルの敷き布団は、縦、横のサイズしかありません。
国家検定の試験でもそうですが、1枚の布を敷き布団のシングルなら、100×210cmに縫って綿を入れるのです。
すると、綿が入った後のサイズは、上から計るとサイズが違います。
敷き布団で一番違いが出ますが、厚みがある真ん中あたりは細く、頭と足の部分は広く見えます。厚みが違うからです。
しかし、元々、100×210cmで生地が縫われてているため、敷き布団カバーのサイズはこのサイズでないと合いません。
だから、スノコベッドに木綿の敷き布団のできたてを置くと、真ん中が狭く感じます。
くわえて、長さが足りないようにも見えます。
しかし、使用している間に、厚みが減ってきて、薄くなってくるとそのサイズになっていきます。
マットレスは、縦×横×厚みでつくり、初めからその大きさですので、ベッドに乗せてピッタリとなるわけです。
ベッドの場合、ボックスシーツといって裏側の方にゴム紐が回してあり、四隅をかけてあげると簡単にシーツがかかるようになっていたり、ホテルのように、一枚の布を厚みを計算して大きく作り、ベッドメイキングしたりします。
日本式の敷き布団は、ファスナーがついた敷き布団カバーを使用し、新品でも、薄くなってもピッタリ。というわけです。
3.敷き布団のサイズ、シングルサイズ、昔は105cm巾
敷き布団のシングルサイズは少し前まで105cm巾が一般的でした。
それは、着物の生地のような反物という生地を縫い合わせて布団をつくったからです。
横幅36~37cmで、長さ11~12mの生地のことを小幅(こはば)生地といいます。
また、これを1反と数えます。シルク糸の単位が長さの単位の原型です。
この小幅生地3枚をつなぎ合わせた幅が1人用の敷き布団の大きさです。
仮に36cmの幅だとすると、
縫い代(縫うためにつなぎ合わせる余りの必要生地部分)が0.5cmずつとすると、
左右で0.5cm+0.5cm=1cm 36cm−1cmで35cm×3枚=105cm
となるわけです。
日本人の背丈が低かった昭和初期は、横幅105cm×長さ190cmがシングルサイズでした。
戦後は105cm×200cm、現在では100cm×210cmになっております。
横幅は、なぜ100cmになったのでしょうか?
サテン生地って知っていますか?
小幅ものが、手織が手織り中心に作られているのに対し、だんだんと機械織りになっていき、機織りの技術が上がっていくに従って、やわらかい生地、「サテン」が登場し始めました。
さて、あとで3枚を縫い合わせるなら、初めから小幅3枚分で織り上げた方が縫い合わせる手間が省けて効率よくありませんか?
そこで105cm巾のサテン生地が登場しました。
ところが、どういうわけか分かりませんが、105cm巾なのです。
縫い代を引くと105では仕上がりません。
そのため、100cmになったという、意外なわけがあるのです。
4.人は何センチ巾のサイズの敷き布団が気持ちよい?
人は一晩に寝返りを20〜30回するとよい眠りが得られます。
仰向けで、布団の真ん中で眠った場合、からだの両脇に何㎝余裕があるとゆったり眠れるのでしょうか?
答えは肩幅の2.5〜3倍です。
では、日本人の体型で、寝返りに必要な敷き布団の巾は何㎝なのでしょうか?
男性の肩幅の平均が43cm。女性が41cm。
ゆったり眠るのには、男性で108cm、女性で102cm程度は必要です。
最低でも両脇15cm必要なので、70cmの巾がないと疲れがたまります。
敷き布団のダブルサイズは140cmでできていますが、2人で寝て最低単位の眠りのサイズです。
ゆったり眠るのには向いていないため、家のスペースがあれば、なるべくシングルサイズの敷き布団で1人ずつ眠ることをおすすめします。
5.セミダブルサイズの敷き布団を使う場合のおすすめ人数は?どんな人に向いている?
人が眠るのには、最低70cm必要と前述しました。
ゆったり眠るのには男性108cm、女性102cmということは、
体の大きな方、筋肉質で、寝返りの動きが大きい方、ほんとにゆったりと眠りたい方などは、セミダブルの敷き布団を1人で使うとちょうどいいサイズとなります。
お母さんと、生まれたての赤ちゃん、あるいは幼児とお2人で使うのもよいかもしれません。
大人2人で眠ると、疲れが取れないサイズとなってしまうので、要注意です。
ちなみに、マイスターはなんでも実験します。
同じ布団で敷き布団と掛布団を用意し、シングルサイズ、セミダブルサイズ、ダブルサイズと1人で寝てみたことがあります。
理論通り、ゆったり眠るとしたら、セミダブルがちょうどよかったですよ。
ダブルサイズを1人で使ってもよいように思えますよね。
確かに、敷き布団が大きいのはよかったのですが、掛布団が無駄に大きかったのです。
寝返りの際、羽毛布団にもかかわらず重く感じました。重く感じたということは、寝返りの時に目が覚めていたのです!
一方、シングルは、とても寒い日に横向き時、すきま風を肩口と腰に感じることがありました。
セミダブルはそういったことがほとんどありませんでした。
ですから、贅沢に眠りたい人は、セミダブルを1人でお使いいただくと、とても快適だと思います。特に、スポーツをよくされる方は、寝返りの動きも大きい場合が多いので、おすすめです。
6.ベッドのセミダブルサイズ敷き布団について
注意してほしいのは、JIS規格のセミダブルサイズの幅が125cmという点です。ほとんどのベッドメーカーは幅120cmでつくっているため、5cm分の幅が余ります。
両方に振り分けたら2.5cmで、あまり気にならないかもしれませんが、お休みになる場所や収納スペースに合わせて敷き布団やマットレスをきっちりつくりたい方もいらっしゃるでしょう。
櫻道ふとん店なら、しっかり計ってお伝えいただければそのサイズでおつくりいたします。ただし、その場合、品物によっては、追加料金が発生する場合がありますので事前にご確認下さい。
7.ベッドサイズで敷き布団と掛布団を選ぶ時の注意点
ベッドを買ったので、ベッドに合わせて布団をつくってほしいというご注文をよくお受けいたします。
その際、「ベッドのサイズに合わせておつくりいたしますので、サイズを教えてください」というと、ベッドメーカーのカタログで、ベッドフレームのサイズを読んで、教えていただくことが多くあります。
ベッドサイズは、木の枠であるフレームのサイズとマットレスサイズの2種類があります。
敷き布団やマットレス、
ベッドマットレスの上にのせるベッドパット、
マットレスパットなどは、
このマットレスサイズをお伝えいただくと、ピッタリのサイズでおつくりできます。
また、マットレスに応じて掛布団もおつくりいたしますので、布団等のサイズはフレームサイズではなく、マットレスサイズを教えていただくことが重要です。
8.体型による掛布団のサイズの選び方
通常、掛布団の横幅のサイズは、敷き布団の大きさプラス50cm。長さは敷き布団と同じです。
一例
シングル100cm×210cmの敷き布団に対し、掛布団は150cm×210cmとなります。
これで、一般的な人は寝返りを打っても大丈夫です。
ただ、体の大きな方、例えば100kg以上の体重がある方などは、シングルに対して、セミダブルの掛け布団を使ってもよいですね。ダブルだと大きすぎると思います。
セミダブルサイズの敷き布団にはセミダブルサイズの掛布団
セミダブルの敷き布団マットレス、ベッドには、やはり、セミダブルの掛布団がよいと思います。
セミダブルは、大人1人がゆったりと贅沢に眠るサイズで、2人で眠るとしたら、お母さんと子どものサイズだからです。
また、ベッドでご使用の場合、ダブルサイズを掛けると両脇に掛布団が垂れ下がりすぎ、重たく感じます。
特に女性がセミダブルの敷き布団・マットレス・ベッドに1人で眠る場合、掛布団はシングルサイズでもよいと思います。