【快眠対談】感性工学と布団職人が「快適な眠り」を共同研究

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「お母さんの腕の中で眠る」ような敷布団ができました。
快眠対談

【快眠対談】
◎吉田宏昭教授(信州大学繊維学部感性工学コース教授)
◎林 義浩(厚生労働省認定「ものづくりマイスター」「一級寝具製作技能士」櫻道ふとん店代表)

職人と科学、勘とデータ、感動と数値……。
快適な睡眠のための寝具とはいったいなんなのか。

厚生労働省認定ふとんマイスターの林義浩と、
歩く、寝る、座るといった人間の行動から快適な道具のあり方を探求する吉田宏昭
教授が足かけ10年の歳月をかけて共同研究に挑んだ結果、
「お母さんの腕の中で眠る」ような超快適敷布団の開発に成功した。

日本発祥の研究分野「感性工学」

信州大学繊維学部感性工学コース吉田宏昭教授
吉田宏昭教授(信州大学繊維学部感性工学コース教授)

林 義浩(櫻道ふとん店代表取締役):先生のご専門は感性工学ということですが、どのような学問なのですか。

吉田宏昭(信州大学繊維学部感性工学コース教授):もともとは、数値で人間の暮らしを快適にする人間工学からスタートした学問です。例えば、椅子の高さはJIS規格で70㎝と決まっていますが、これは身長168㎝の人を基準に作られています。昔のJIS規格は74㎝。男性だけを基準としていたからで、女性には高かったわけです。このような「人間にとっての快適」を数値化するのが人間工学です。

ここに「人間の感性」という視点を取り入れて、「人間に寄り添う工学」が提唱されました。自動車メーカーのマツダが始めたもので、マツダの社長が初めて「感性工学」という言葉を使ったと言われています。

:日本発祥ということですか。

吉田:そうです。海外では感性はあまり重要視されていません。座るだけでしょう、寝るだけでしょうと欧米人は結構ドライなんですね。

:先生はもともと感性工学がご専門なんですか。

吉田:全然ちがいます。もともとはバイオメカニクスという分野。生体力学ですね。「人間の身体のなかの現象を調べる」ということをやっていました。例えば日本人は建物や車を作る時、外から作っていくわけです。
そうすると外見は立派だけど、シートがちゃちで運転しづらいクルマが出来あがる。
でも人間に一番近い部分、つまりシートから発想していくと乗り心地のいいクルマが出来あがる。そういうことを研究しているうちに、いつの間にか感性工学を研究するようになっていました。

生活に根付いた文化こそ、実は最先端

:先生にさまざまな数値データを教えていただいたなかで、日本人の身長は146~175㎝が9割というのがありました。なるほど布団のサイズもそこから来ているんだなと納得しました。

昔の反物は巾37㎝です。それを3つつなげるから「三巾(みはば)」といって、これが敷き布団の大きさになります。きっちりつなげると105㎝。先生が寝返りの研究をやっていたとき、敷き布団に必要な巾は肩幅から2.5倍ということがわかって、それがちょうど105㎝ぐらいですからね。

吉田:ちゃんと理にかなっているんですよ。

:数値で教えてもらうと、改めて日本の布団文化はすごいと思います。

吉田:反物の寸法にもちゃんと意味があるんですよね。僕は身長が180㎝なので、普通の布団だと足が出てしまう。それで母親が2mの布団を作ってくれて、やっとしっかり眠れるようになりました。いまは2m10㎝の布団です。

:ぼくの友達は身長182㎝で、和菓子屋をやっているんですが、女性と同じ高さの台で作業をしているから猫背になってしまうそうなんです。それで、サイズの合ったうちの布団に寝てもらったら足も伸びて、猫背が治ったといっています。

吉田:人生の3分の1は布団のなかにいるのですから、布団とどう付き合うかは大事だなと共同研究をさせてもらってあらためて感じました。

:たしかに共同研究をさせていただいて、私たち職人が勘でやっていたことが実は科学的にも正しいということを知り、勇気をいただきました。

吉田:便利な世の中になり、現代人の感性はかなり落ちていると感じています。そんな中で、だんだん昔の知恵のすごさがわかってきました。

布団の研究を始めて、男女では硬さの好みが違うことや、腰を硬くすると寝返りしやすくなることがわかってきたのですが、実は日本人はもうとっくにわかっていたんです。櫻道さんはちゃんと実践していましたからね。

:僕らは数値化できていないけれども、経験の中から試行錯誤でやってきている…

吉田:日本の生活に根付いている文化というのは、実はさまざまな試行錯誤から到達したところであり、最先端なんですよ。ぼくたちはそれを証明しているだけという見方もできるかもしれませんね。

:櫻道ふとん店は時代の最先端?(笑)

吉田:そういうことになります!(笑)

腰痛で悩む布団職人が、研究者と出会う

櫻道ふとん店代表取締役/厚生労働省認定ふとんマイスター 林 義浩
林 義浩(櫻道ふとん店代表取締役/厚生労働省認定ふとんマイスター)

吉田:櫻道さんから「布団の研究ができないだろうか」というご相談をいただいたのは2011年でしたね。ちょうど海外のベッドメーカーと共同研究をしていた頃だったので、日本の布団にとても興味がありました。

:先生にお会いしたとき「人間は、自分の筋肉と同じ硬さの敷き布団を自然に選んでいる」という話をお聞きしました。だから女性は柔らかいもの、お年寄りも柔らかいものを選び、筋肉満々の人は硬い布団を選ぶ。それは私たちも職人の勘として知っていたことなので、この人となら面白い研究ができそうだなと思いました。

吉田:職人の勘ですか(笑)。

:そうです(笑)。私はずっと腰痛で悩んでいて、腰痛にならない布団をなんとかして作りたかった。それで、いろんなことをしました。最初は木綿布団で真ん中を高くする「中高」にしてみました。今までのよりはよかったけど、やっぱりダメでした。次は羊毛でやってみたけど、それもダメ。ミリ単位で高さを変えながら布団を作っていたら、最後は職人さんも怒って(笑)。これは勘だけではらちがあかないなと思い、先生をご紹介していただいたのです。そこで試作した布団を持って行ったところ、体圧を「点」で分散させるために、もっと適した高反発素材はないのかといわれました。

吉田:私もいろいろ検討して、提案したのが車のシートに使われている超高反発凸凹ウレタンでしたね。

林:そうです。その素材に凸凹の波をつけることで、体圧を点で支えて分散する布団を作ろうということになりました。ここからがコラボの始まりでした!

シングル布団の面積に19万本の圧力センサー

吉田:たまたまうちの研究室の学生が「先生、プロファイル(輪郭)の高さを変えたらどうなるんでしょうか」と言い出して…そこから波状の輪郭の高さを変えたり、間隔を変えたり、硬さを変える実験が始まりました。その効果を測定するために「4D寝姿勢計測装置」の共同開発も行いました。
人間が寝ている時の姿勢や、どこに力がかかっているかを知りたいと思っても、寝具の中に沈み込んでいる背部は隠れているので、外部から観察することはできません。そこで沈み込んでいる部位をリアルタイムに計測できる装置を開発したわけです。

: 布団の接地面のすべてを可動性のピンで置き換えて、体圧の変化を測定するという試みで、今までどの寝具メーカーもやったことのないことでしたね。

吉田:そうです。シングル布団の面積に約19万本のプローブピン(ピンの中にバネが入っている)を設置して、下部の圧力センサーで数値を測定しました。この装置のおかげで、寝た際の沈み込み量と体圧分布を計測することができました。

:装置の開発も、職人さんたちの力によるものだとお聞きしています。

吉田:そうです。長野県の坂城町は樹脂成形などの工業が盛んな町で、そこの職人さんたちの技術がなければ完成できなかったと思います。
19万本のピンを設置して、体重の変化に応じてピンが浮き沈みしながらセンサーに圧力を伝える仕組み。つまり、ピンの1本1本がまったく同じように作動しなければ、正確な数値を測定することはできません。最終的にそれを調整することができたのは、坂城町の職人さんたちの手作業でした。簡単に真似のできる装置ではありません。

寝ている時の沈み込んでいる部位をリアルタイムに計測できる装置「4D寝姿勢計測装置」
「4D寝姿勢計測装置」の圧力センサー

お母さんの腕の中で眠るような布団を!

:「4D寝姿勢計測装置」のデータを基に、快適な眠りを約束する「ヘルシー安眠敷布団」が生まれました!

吉田:腰が比較的沈み込んでいる人は、臀部のみ硬い素材にすれば寝心地が向上するなど、いろいろなデータがとれましたね。一番驚いたのが、ウレタンの「波」が高ければ高いほど、圧倒的に寝心地が良くなるということでした。

:その理由が「赤ちゃんはなぜ腕の中で眠るのか」ということと同じだといわれてびっくりしました。

吉田:そうなんです!人間の体の構造をみると、皮膚・筋肉という柔らかい層があって、その下に骨がある。硬い下地の上に柔らかいものがあって、赤ちゃんを支えているわけです。超高反発ウレタン尾場合も、プロファイルが高いほどクッション性があるから柔らかい。そしてその下部には硬い層がある。赤ちゃんがお母さんの腕の中で寝ているのと同じような状態ができるので、よく寝られるのではないかという仮説を立てました。

お母さんの腕の中のような二層構造を、敷布団でどうやって実現するか。超高反発凸凹ウレタンの硬さや厚さ、波の大きさなどをミリ単位で調整して、やっと納得できる布団を開発することができました。

自分自身がこの布団で寝た時、翌朝、ものすごく気持ちよく目覚めることができました。腰の痛みもまったくない。やっといいものができたと、ほんとうに嬉しくなりました。

お母さんの腕の中で眠るような2層構造の「ヘルシー安眠敷布団」

仰向けに寝た方が、ずっと健康的。

感性工学 吉田教授と櫻道ふとん店代表取締役社長の林

吉田:最初にお話ししたように、私たちは人生の3分の1を布団の中で過ごす。もっと科学が積極的に関わっていい分野ですよね。睡眠の質向上に感性工学を役立てることができてよかったと思っています。

:意外だったのは、先生に睡眠姿勢について測定していただいた時、仰向けと横向きでは疲れの取れ方が全然違うということでした。仰向けの方が布団に接触する面積が多いので、疲れが取れやすいと考えています。

外国人は身長190cmを超える人も多いのに、ベッドの寸法は195㎝です。この小さなサイズで仰向けに寝ると枕の場所がずいぶん少ないので、足を曲げて横向きでしか寝られないのです。一方、日本の布団職人の国家検定では、布団の長さは身長+35㎝です。だから仰向けで寝ることができる。私は横向きの方が疲れが取れるし、腰にも負担がかからないと思っていたのですが、それが逆の結果でした。

吉田日本人の仰向け寝のほうが、ずっと健康的です。

:そうなんですよ。ところが日本人のライフスタイルはどんどん欧米化している。ふかふかの柔らかい布団のほうがリッチだと思っている。ほんとうはせんべい布団のほうが睡眠の質はずっとよかった。

吉田:自分たちが培ってきた文化の賢さを数値化したり見える化するために科学があって、それをもとにまた新しい文化を作っていくのが職人さんたちなのかもしれませんね。

:睡眠に関しては、まだまだたくさんの方が悩みをもっています。よく眠れないとか、腰や体が痛いとか……、そういう個別の悩みに私たちは布団作りのプロとして応えていく責任があると思っています。これからもどうか先生の力をお貸しください。
今日はどうもありがとうございました。

column枕開発ことはじめ

櫻道ふとん店では、現在「だれでも安眠できる枕」を開発しています。ご期待ください!

吉田:睡眠に対する悩みですが、なぜお年寄りがよく眠れないかというと「寝返りができなくて疲れてしまうから」ということがあると考えています。

林:寝返りと加齢が関係あるわけですか?

吉田:そうです。寝返りって、肩が内に入るからできるんですよ。肩が内に入らないと寝返りができません。関節が固くなっている人、例えばバンザイできない人は寝返りもできないのです。だから肩のストレッチをすることも、大事だと思います。

林:肩が入る入らないということならば、枕も大事になってきますね。櫻道ふとん店ではお客様のために「測定枕」もやっているのですが、同じ肩幅でも、肩の入り方が全員違うのです。

吉田:人間は10年で1㎝ずつ猫背になってくるといわれています。だから20歳と80歳では最適な枕の高さも全然違ってくるはずです。

林:なるほど高齢者の人でも寝返りしやすい枕…これは私たちが開発しなければいけないテーマかもしれませんね。

測定枕の測定中
測定枕の測定中
測定枕
測定枕は寝姿勢で計測します。
測定枕
測定枕のお渡し
ベッド用マットレス

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オリジナル構造敷布団「腰いい寝」「快眠の王」

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《健康寝具の製造直販店》富士山の布団屋 櫻道ふとん店

富士の麓、御殿場の地で、お客様の要望に応え続けて50年、唯一無二のオリジナル布団を製造直売しています。

《富士山の布団屋》こんなところでもお使いいただいています!

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ご購入前のご相談

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